日本農芸化学会2009年度大会
会期:2009年3月27日~29日
会場:福岡国際会議場・マリンメッセ福岡
藤田恵理、桜井隆史1)、大澤具洋、田中浩仁、高橋笑、跡見友章2)、吉村浩太郎3)、金野智弘4)、石原一彦4)、長谷部由紀夫5)、跡見順子6)
(東京大学大学院情報理工学研究科、東京大学総合文化1)、首都大学東京大学院人間健康科学2)、東京大学医学部形成外科3)、東京大学大学院工学院工学系研究科マテリアル工学4)、株式会社アルマード5)、東京大学サステイナビリティ連携研究機構6))
卵殻膜は鳥類の卵殻の内側に存在する二重膜である。昨年我々は、活性エステル基を有するモノマーを一成分とした2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)ポリマー(PMBN)は生体分子との非特異性的相互作用を抑制する一方で、特定のタンパク質を固定化することができるバイオコンジュゲートMPCポリマーを利用し、可溶性の高い加水分解卵殻膜ペプチド(Egg-shell Membrane peptide:EMP)をPMBNを介して組織培養ディッシュに結合させた結果、EMP上にヒト真皮線維芽細胞が接着、増殖し、EMPの量的依存にⅠ、Ⅲ型コラーゲンの発現量が増加したという結果を報告した。今回はコラーゲン以外の他の細胞外基質(ECM)成分についても検討した結果と卵殻膜入り化粧品の使用効果を報告する。
卵殻膜は真皮の線維芽細胞等に作用し皮膚弾力の維持に貢献すると考えられる。
まとめ
これまでⅢ型コラーゲンの合成を亢進させる条件や要因に関してほとんど報告がない。
またコラーゲンとヒアルロン酸等の糖を含むECM物質との比率や相互関係などについても不明な点が多い。今回、in vitro環境ではあるが、加水分解卵殻膜ペプチドと特異的に相互作用する実験条件内(30~120mg/ml)(このとき細胞はほぼコンフルエント)で、低濃度の卵殻膜ペプチドでもⅢ型コラーゲンの合成と分解を高めターンオーバーを亢進することが明らかになった。この実験環境について、生体皮膚における細胞環境のどのような状態を反映しているかについて、今後検討を加える予定である。卵殻膜ペプチドは、加齢とともに減少する生体皮膚真皮細胞のターンオーバーを亢進させ、コラーゲンのⅢ型/Ⅰ型を高める可能性もあり、in vitroとin vivoを連携させるモデルの検討が必要である。ヒト皮膚塗布をした卵殻膜入り化粧品が水分量を高め、弾力性にも変化をもたらす傾向もあり、実験環境の整備と皮膚及び皮膚ECM環境の検討をさらに検討してゆきたい。