第108回日本皮膚科学会総会
会期:2009年4月24日~26日
会場:福岡国際会議場・マリンメッセ福岡
藤田恵理1)、大澤具洋1)、高橋笑1)、田中浩仁2)、跡見友章2)、桜井隆史3)、長谷部由紀夫4)、跡見順子5)
(東京大学大学院情報理工学研究科1)、首都大学東京大学院人間健康科学2)、東京大学総合文化3)、株式会社アルマード4)、東京大学サステイナビリティ連携研究機構5))
ニワトリの卵の卵殻の内側に存在する薄膜である卵殻膜は、古くから創傷治療効果があるとされていたが、近年、加水分解により可溶化した卵殻膜が開発され、卵殻膜を応用する範囲がひろがりつつある。この 可溶性卵殻膜が皮膚を改善または維持する機能をもつことを明らかにするため、卵殻膜入り化粧品を一定期間使用し、使用前後での皮膚の弾力を測定したところ、卵殻膜入り化粧品を使用した群では前腕皮膚の弾力が増加する傾向にあった。また、卵殻膜サプリメント、化粧品を1年以上の長期間使用している群では、顔面のしわが同年齢の平均と比較して少ない傾向にあった。皮膚のたるみなどの老化による変化は、真皮の細胞外マトリックス成文の減少や変性が大きな要因となっている。卵殻膜は真皮の線維芽細胞等に作用し、皮膚弾力の維持に貢献すると考えられる。
まとめ
- 卵殻膜サプリメント摂取群の皮膚は、対照群と比較して、1. 紫外線しみの減少、2. 頬の水分量の増加、3. 前腕の油分量の増加が観察された。
- ヒト皮膚線維芽細胞に加水分解卵殻膜を特異的に作用させたin vitro濃実験において、ヒアルロン酸合成酵素2(Has2)のmRNAが卵殻膜ペプチド60~100 mg/mlで度依存的に増加した。
- ヒトを対象とした研究から、卵殻膜由来成分の皮膚塗布は、上記のようなヒト皮膚組織の性質を良い方向へ変化させることが明らかになった。また卵殻膜ペプチドに結合したヒト真皮細胞がHas2遺伝子を増加させることを考えると、ヒトの皮膚実験結果は、ヒアルロン酸などの細胞外環境の改善が1つの要因として影響したことが考えられる。
- ヒアルロン酸は、1)1日1~3回入れ替わっている、2)ヒアルロン酸の種類によって良い状態と良くない状態がある、3)良いヒアルロン酸と悪いヒアルロン酸を合成・分解する酵素の種類があること等が報告されている。今後、卵殻膜が、ヒアルロン酸やコラーゲン等の細胞外基質のターンオーバーにどのように影響しているかをさらに研究し、卵殻膜の皮膚細胞環境改善効果のメカニズムを明らかにしたい。
- 細胞、ヒト対象のこれらの結果から、加水分解卵殻膜という優れた素材の皮膚組織への美容・健康維持効果の解明が待たれる。